MITA Home

Translation project on neurodegenerative diseases

Yasuko Arima

15 October 2003


「進行性核上性麻痺」を中心に、まれな神経疾患の情報を翻訳するプロジェクト

関連サイト: http://www.geocities.jp/togarasi2003/index.html

 

1)まれな神経疾患(neurological diseases)とは

  *日本の人口 2003.9.1現在 1億2,761万人

  *米国の人口 2.7億人

  *順天堂病院入院患者数は順天堂病院のサイトから転記。

   http://www.tokeidai.co.jp/juntendo/kyositu/nounai/nounai_3.html

 

★パーキンソン病は稀ではない

 

                     罹患率    日本の患者数   順天堂病院入院患者

■パーキンソン病        100人/10万人  120,000人     172

 PD Parkinson's Disease

*「全国パーキンソン病友の会」あり http://www.jpda-net.org/

■若年性パーキンソン病       ?                  4

 Young-onset Parkinson's Disease

■常染色体劣性若年性パーキンソン病 ?                3

 Autosomal Recessive Juvenile Parkinsonism

■家族性パーキンソン病       ?                  1

 Familial Parkinson's Disease

 

★アルツハイマー病も稀ではない

■アルツハイマー病          ?      300,000人?     3

 AD Alzheimer's Disease

 *「社団法人呆け老人をかかえる家族の会(日本アルツハイマー病協会)」あり

  http://www.alzheimer.or.jp/

 *日本の痴呆症患者130万人のうち、少なくとも30万人はアルツハイマー病

  http://be.asahi.com/20030920/W25/0013.html

 

●まれな神経疾患

                      罹患率    日本の患者数   順天堂病院入院患者

■進行性核上性麻痺        米国の数字で6.4人/10万人

 Progressive Supranuclear Palsy 研究班の推定値は2,000〜3,000人   28

 米国では2万人いると推定されているが、診断されているのは3,000〜4,000人。

(大脳)皮質基底核(神経節)変性症  ?                    8

 CBGD Corticobasalganglionic Degeneration

 CBD Corticobasal Degeneration と呼ばれることもある。医師によっては、進行性核上性麻痺

と同じものだとする人もいたぐらい、よく似ている。

     多系統萎縮症 MSA Multiple System Atrophy 下記の3つの病気をまとめて、多系統萎縮症とする方向にある。

 線条体黒質変性症         1〜3/10万人  1,2763,828人? 15

 SND Striatonigral Degeneration

 オリーブ橋小脳萎縮症          ?                   8

 OPCA Olivo-Ponto-Cerebelar Atrophy

シャイ・ドレーガー症候群     0.31人/10万人     395人?     3

 SDS Shy-Drager Syndrome

 

                     罹患率    日本の患者数   順天堂病院入院患者

■脊髄小脳変性症         5〜10人/10万人

 SCD Spinocerebellar Degeneration

 *「全国脊髄小脳変性症友の会(全国SCD友の会)」あり http://homepage3.nifty.com/jscda/

*遺伝性のものにはたくさんの型がある。オリーブ橋小脳萎縮症は以前はここに分類されていたが、最近は多系統萎縮症に分類される。

 

■びまん性レヴィ小体病         ?                    9

 LBD Lewy Body Disease

*この病気は、びまん性Lewy小体病 DLBD Diffuse Lewy Body Disease または、

Lewy小体型痴呆 DLB Dementia with Lewy Bodies と呼ばれることもある。

 

■前頭頭頂性痴呆            ?                    7

 Frontotemporal Dementia 

 

■ピック病 Pick' Disease         ?                 

 

     ALSはパーキンソン症候群ではないが、痰の吸引が必要など、進行性核上性麻痺の場合と同じ問題があるので、挙げておく。

■筋萎縮性側索硬化症        1.9-6.5/10万人

 ALS Amyotrophic Lateral Sclerosis

 *「日本ALS協会」あり http://www.jade.dti.ne.jp/~jalsa/

 

2)なぜ、このプロジェクトを始める必要があったか

 ・日本には患者・家族団体はないが、USA(1990設立)とUK(1994設立)にはある。

  The Society for Progressive Supranuclear Palsy  http://www.psp.org/

  The PSP (Europe) Association  http://www.pspeur.org/

 ・進行性核上性麻痺に関する患者・家族のための日本語の情報は皆無に等しく、家族の闘病中

は、英語の情報だけが頼りだった(上記のPSP協会を見つけたのが1997年の暮れで、1998年1月に開設されたメーリングリストに、開設後すぐに参加することができた)。

 ・PSP協会の目的。The Society provides information, education, support and advocacy to persons diagnosed with PSP, their families, and caregivers. The Society educates physicians and allied health professionals on PSP and how to improve patient care.

 ・2000年2月15日に、USAのPSP協会の理事・Ellen Pam Katzさんから、医師の校閲を通すという条件の下でならば、PSP協会のすべての資料を日本語に訳してもよいと、許可をもらった。

 ・パーキンソン病あるいはパーキンソン症候群の情報を読んでも、類似した病気については病名すら書いていないこともある。

例1)病名も書いていないサイト

日本イーライリリー株式会社提供のパーキンソン病についてのサイト

パーキンソニズムについて

http://www.parkinsons.co.jp/parkinson/parkinson_about3.cfm

例2)病名と少しばかりの情報が書いてあるサイト
 
国立療養所神経筋難病研究グループ提供「神経筋難病情報サービス」

   パーキンソン症候群あるいはパーキンソニズムとは

http://www.saigata-nh.go.jp/nanbyo/pd/pddef.htm

例3)病名は書いてある本

『順天堂大学脳神経内科 水野美邦教授が答えるパーキンソン病 治療と生活Q&A
患者・家族への実践アドバイス』(保健同人社)

 ・医師でさえ知らないことがある。

 ・知っていたとしても、病気の初期に正確な診断をすることはむずかしい。また、死後の解剖によって誤診であったことがわかるケースも少なくない。
米国での数字で、180ケースのうち137ケースがPSP、43ケースが病理学的に違う病気と診
断された。この誤診であったとわかったケースの70%は、大脳脳皮質基底核神経節変性症、多系統萎縮症、レヴィー小体症であった。(参考文献:PSP Advocate, First Quarter 2003)

 ・情報については、ほんの少し状況がよくなった。「厚生労働省精神・神経疾患研究委託費 研

究課題名:神経疾患の予防・診断・治療に関する臨床研究」(平成12年度〜平成14年度)において、患者・家族のためのPSPケアマニュアルが作成されたから。

 ・しかし、インターネットにアクセスできない人たちは取り残されたまま。

・治療法もなければ、対処療法的に効く薬もなく、症状が進行していくばかりの病気にあっては、「医療」よりも(とともに)日々の「介護」の問題がより切実。したがって、患者と家族向けの情報が重要。

 ・日本には神経難病の患者を受け入れるホスピスはないし、神経難病専門の病院でさえ胃ろうをしている患者や痰の吸引の必要な患者をいやがることがある。それに、3か月経ったら出て行けという悪しき「制度」がある。したがって、患者は尊厳ある死を迎えられる保障がない。

 

)プロジェクトに協力してくれている方々

 ・家族が闘病中は、親しい友人などに頼んで翻訳を手伝ってもらうのみで、翻訳ボランティアを募る余裕も校閲してくれる医師を探す余裕もなかったが、「日本骨髄腫患者の会」の翻訳チームのことが常に頭にあった。http://www.myeloma.gr.jp/~mmoffice/honyaku/

 ・昨年の4月に自らも医学翻訳の勉強を始めたが、これではいつまでたっても進行性核上性麻痺の情報の翻訳は進展しないと、この8月にMITA会のメンバーにお手伝いのお願いの呼びかけをさせていただいた。現在、ブルーヘルマンスさん+翻訳担当10名の計11名の方の協力をいただいている。

 ・校閲をしてくれる医師団

課題番号15指-3 研究課題名 政策医療ネットワークを基盤にした神経疾患の総合的研究の中でPSP小委員会の委員を務められている先生方7名

*研究班の名称は昨年度までは『精神・神経疾患研究委託費(12指-1)「神経疾患の予防・診断・治療に関する臨床研究」』で、今年度から上記のように変わった。

 

4)ボランティアとして複数の翻訳者の協力を得るプロジェクトの利点と欠点

 【利点】経費が安くてすむ

     お互いに勉強しながら作業ができる

     PSPに関する知識のある翻訳者の育成ができる

     情報収集量が多い

     一人ではできないことができる

     締切が緩やかなので、不明点をとことん調べられる

【欠点】当然のことながら本業優先で進めるので、作業スピードが滞りがち

用語統一が大変

締切が緩やかなので、ついスピードが落ちる

 【無料で労力を提供する代わりに翻訳者が得るものは?】

  ・まとめ役として心に留めているのは、ふだんの仕事だったら聞きにくいようなちょっとした質問でも出してくださいとアナウンスを繰り返すこと。

  ・しばらくはサイトでのみ公開ということになるが、サイトにしろ、冊子にするにしろ、本にするにしろ、翻訳者の名前は明記し、その方の実績として残るようにする。

 

5)出版社を通しての出版がむずかしい理由

  進行性核上性麻痺だけでは予想される購買者数が少なすぎて、出版社はペイしない。医師向けで最低400部の売り上げが必要。しかもできあがるものは高額書籍。入院などで闘病費がかさむ家族は買えないかもしれない(どこの都道府県でも難病指定されているわけではないから)。

  発行部数が少なくても出版社が引き受けてくれる場合もあるが、それにはこの分野での著名な医師の後押しが必要。

  いずれにしても、まず医師向けの本、それから患者・家族向けの本というのが通常の筋道。

 

6)今後の方針

  患者・家族向けのものに焦点を当てたいので、助成金を取得して冊子を作成することを検討。

  助成金としては、日本財団、ファイザー製薬などを考えている。

日本財団

  http://www.nippon-foundation.or.jp/kyotu_site/zyoseikin/g_bosyu.html#volunteer

  ファイザー製薬

  http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/philanthropy/pfizer_program/index.html

  助成金が取得できたときはオンデマンド印刷PODを考える。

http://www.odpjapan.com/

 

7)最後に

  英語でなら情報はあるが、日本語では情報がないという病気は、神経難病に限ったことではない。機会を見つけて、MITA会のメンバーの方々がそうした病気と闘っている患者さんと家族のために、その才能を発揮していただけるとうれしい。

 


[back to index of past meetings]