Healthcare interpretation vs. business interpretation
医療通訳 vs. 企業通訳 ―現場レポート―
Naomi Morita
20 September 2006
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フリーで8年近く仕事をしてきたが、2年ほど前から「MICかながわ」で医療通訳としても活動。
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1) クライエントの違い
クライエントである患者、医師が通訳を使い慣れていないこと。特に医師は、通訳に配慮した話し方をするときと、まったくそうでない場合、layman’s termを知っている場合、technical termしか知らない場合、まるきり英語がわからない場合、英語で単語だけ吐き出すが動詞などは日本語で話すなど、十人十色で面接や診察が始まってすぐに通訳が柔軟に対応できないといけない難しさがある。→相手の特性を理解する

2) 言葉の問題
言葉が、日英で対応していないものがある、あるいは辞書に出ている言葉では通じない、辞書に出ていない場合がある。→勉強会などで検討して事前に理解しておくことが大切。
「妊娠中毒症」(△toxemia ○pregnancy induced hypertension)
「子宮口」(cervix, あるいはopening of the uterus)
「怒責(どせき)」いきむこと (push, strain)
医学的にある程度高度な知識が必要とされると同時に、日常生活で使用するような表現も覚えておかないといけない。仕事では使用しないような簡単な表現も覚える必要がある。
(「注射をするので袖をまくってください。」「息を吸って、止めて。はいゆっくりしていいですよ。」)
3) 通訳を使い慣れていないことからくる、あいまいな日本語表現
日本語に特有の主語なし、あいまい表現、だらだらとした文章運びなどを処理するには背景を事前に理解しておくことが必須。→ ロールプレイの練習が有効

4) 通訳するところと、しないところ
通訳の基本的なスタンスは、「話されたことは全部通訳する」だが、話者の独り言や内輪での話は通訳する必要はない。
院内では、医療スタッフは通訳を同僚とみなし、現場で通訳すべきでない言葉を発することがある。一方で医療通訳者は、患者を守る立場にある。
そこで先生の不用意な独り言や、患者を明らかに傷つける言葉は、訳す前、先生に「今の言葉は訳しますか?」と確認するのがいいと考える。(実例を挙げて説明)数少ない私の経験でも、通訳がいることで「半ば独り言、半ば通訳者に対して」発さる言葉がよくあると感じる。通訳を使い慣れていない医療関係者の特質を理解して、スムーズに進行を進めるのも日本では医療通訳の役目かもしれない。
5) 声に感情を入れることについて
予期しない出来事を前にした医師が、患者に対して怒りをぶちまけた。こんなときどう訳すべきだろうか?
正解は、冷静に通訳する、です。
もちろん状況によってさまざまな対応が考えられると思う。最近流行の本に「見た目が9割」というのがありますが、これは情報を伝達するときに、非言語的なメッセージ(声のトーン、大きさ、表情、服装、仕草など)が9割で言葉の内容はわずか1割しか役割を担っていないことを意味している。ビジネス通訳では、割と淡々と通訳するのだが、それは、言語以外は既にオリジナルのスピーカーが伝達しているからである。
怒りのトーンや声の大きさを通訳者が繰り返すと、患者は怒りを2度受けたことになり、患者を守るはずの通訳者は、逆に傷つけてしまうことになってしまう。
→ ロールプレイで練習する程度の感情移入で十分

6) 雑然とした通訳環境
医療以外にも保険制度、異文化理解も重要。
イスラム教:妊婦でもラマダン中は、日が出ている間は絶飲食をする人もいる。
産婦人科で内診するとき日本では医師と患者の間のカーテンを閉めるが、アメリカなどでは逆に閉めない、あるいはカーテンがない。(閉めたほうが何をされるかわからず不安)
7) 事前情報が少ない
病院から面談の詳細情報を得ずらいが、下準備なしに生死を分けるような話し合いの通訳をすることはできない→ 打合せに参加させてもらうなどの配慮が必要。
8) ストレス(代理トラウマ)
告知など重篤な患者さんに関わる通訳は、非常に緊張とプレシャーを感じる。日常では口にしないような、余命、ガン、HIVの発症、先天異常などの言葉を使用することから精神的に疲弊する。→精神面の支えが必要、でも守秘義務から部外者に口外できない。中に溜まってしまう。人の運命を左右すると思うと一言一言がとても重い。医師が選んだ日本語の意味が同じになるように細心の注意が必要。訳を聞いて泣き出す患者もおり、普段の通訳では経験しないような心理的な動揺を克服しないといけない。
このようなストレスを「代理トラウマ」と呼び、トラウマになるような体験をした人をサポートする中で、サポートする側がトラウマを経験したかのようなダメージを受けること→対策として心のメカニズムを理解する、ひとりで抱え込まない、コーデイネータに相談するなどが考えられる。

上記には、問題点を指摘したが、医師のなかには大学病院でもじっくりと患者、家族と向き合い何時間でも話を聞く姿勢を見せたり、自分が英語を話せるにも関わらず通訳を入れて正確な伝達を期す姿勢のあることに、大変心強いものを感じる。
また患者も病院を選ぶ際、通訳サービスが利用できるからという理由で選ぶケースも。
最近東京都では、「在住外国人のための都内リレー専門家相談会」で通訳を入れるため、通訳心得の研修をしたり、「外国籍結核患者支援員(通訳)」を養成したりする動きも見られる。
結論:
日本では、患者を守るために始まった医療通訳だが、患者と医療関係者の両方の便益のために通訳は必要。
通訳をする際は、表面をさらっただけの医療知識、言語知識では誤解を生む可能性あり。
簡単に表現する、ということは必ずしも浅い英語力で対応できるということを意味していない。
現場での体験を共有、検討して誤訳を避けるスタデイグループが必要。
通訳技術を身につけた一般通訳であっても、すぐ現場で対応できる分野ではない。
医療知識がある程度あり、日常生活で用いるような会話ができ、かつ医療特異的な言語間のギャップや異文化理解への関心が必要。
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